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金属加工(切削)の注意点と対策【前編】

こんにちは、アートウインズです。今回は題名の通り、『金属加工での注意すべき点(切削)』の記事になります。

金属加工と言っても幅広く色々あるので簡単な説明から入って本題に移りたいと思います。

金属加工とは

金属加工といえば棒や板などを曲げたり削ったりして形にしていくイメージを持たれている方が多いと思いますが実際には形を作るだけでなく、熱を加えて強度を上げたり逆に加工しやすくする為に軟らかくしたりする『熱処理』といった工程も加工の一種です。

形にする為にも方法は様々あり、「プレスや鋳造で形にする成形加工」「刃物を回転させて金属板などを削って形にする切削加工」「切削とは逆に材料を回転させて削る旋削加工」「回転させた砥石を使用して表面を削る研削加工」「電気を放電させて金属を溶解し形にする放電加工」「金属の薄板を曲げたり叩いたりして形にする曲げ加工」細かく説明すると他にも加工方法はあります。

この数多ある加工方法を利用して作りたい形状とクライアントの要望(短納期で製作してほしい。寸法精度を重視したい。コストを削減したい。量産したい。etc...)を考慮した上で最適な方法を選定して加工を行います。

その中でも今回は『切削』についての記事になります。
弊社が今まで金属を切削する上での注意点や経験談を基に執筆させて頂きます。これから金属加工をされる方や金属の切削加工ついて学びたい方に向けての記事にしていきたいので出来るだけイメージが付き易い様に説明していきます。

注意点と対策

それでは本題に入ります。ここから弊社の実体験をベースに綴っていきますので他社様との認識の相違は多少あるかもしれませんがご了承下さい。

金属は金属でも種類によって材質の硬さが段違いに異なり、全て似た様な切削条件(送り・回転数)では歯が立たず加工は出来ません。

例えば、アルミ系は金属の中でも柔らかく粘度があるので高回転で送りの速い加工が向いている反面、SUSなどの硬さが目立つ材料には低回転で送り速度を下げての重切削加工が好ましいです。(硬い壁に強くパンチすると痛いですよね…おそらく原理は同じで工具も強く当たると負荷が強く消耗が激しくなる)
したがって材質の高度や性質によって切削条件を変更して加工しなければなりません。ここが金属切削に慣れるまで凄く苦労するポイントだと思います。

慣れだけではなく、知識を付ける事で加工を簡易化する事も出来ます。そこで金属を切削する際に弊社の加工者が気にかけているのが「切削工具・材質の特徴・ワークの固定・マシン」の4つのポイントです。このポイントを抑えれば金属切削を多少なりとも簡易化できると思うので、これらを細分化して順に解説していきます。

❶:切削工具

切削工具の知識を持って選定することは金属加工をする上での強力な助っ人の一つになります。金属加工用の切削工具には材質の様々な性質に対応する為に刃の角度・形状・コーティングが工夫されており、大きな特徴として「※1材質専用工具・※2汎用工具」の2種類に分けられた製品があります。

他にも切削工具の材質の違いやインサート(チップ)交換式の物などもあるのですが今回は上記2種類の説明にさせて頂きます。

※1 材質専用工具はある種の材質特化型に製作されています。アルミ用やSUS用といった材質の特徴が予め考慮された仕様になっており、性質に見合った専用のコーティングや形状(刃長の角度等)を最適な条件で製品化されています。使用する事で刃持ちや切粉の排出性の向上が見込めたり、カタログなどにメーカーによって割り出され推奨された好条件が記載してあるので初めて購入してもその切削工具の持ち味を最大限活かした加工が直様でき、取り掛かる時間を短縮する事が出来ます。(マシンの剛性やワークの状況等によってメーカー推奨の切削条件から異なる場合がある。)
しかし、こだわりが強いせいか汎用工具より高価である事が多いようです。

※2 汎用工具とは鉄系やSUS系、その他様々な材質の金属に対応可能な設計になっており、専用工具と同様にコーティングや刃の形状が数多くの金属に対応出来る様に考慮されています。メーカー推奨条件もカタログなどに記載してある為、玄人も初心者も使い易い仕様になっています。切削条件は専用工具に比べると少し控えめな仕様になる事が多いが、鉄系金属だけでも硬さなどの特徴が異なる材質があり、炭素鋼や合金鋼と細かく種類分けすると数十種類はあるので選定した工具で多種多様に対応できるという事は凄く魅力的な製品に開発されています。

他にもまだまだ種類があるので状況に見合った工具を駆使する事で品質向上や時短・コスト削減に重点を置く事が出来ます。

❷:材質の特徴

何度も記載していますが金属といっても様々で「アルミ・鉄・マグネシウム・亜鉛・銅・チタン」などの材質が存在します。これらは材質によって硬さや粘り気が異なる為、特徴を把握しその都度切削条件を変更する必要があります。❶の切削工具で記載した「メーカー推奨条件」も基本的には鉄系・ステンレス系の条件しか記載されていないので、特殊な材質に対しては少し削って見る方法が最適だと思います。
弊社では加工を行う前にバリ取りツールでワークの角を自力で削り、硬さや粘り気の確認を行っています。マシンでテストカットする方法もありますが、自力で削る方法は硬さや粘り気を体感する事で、感覚で材質の特徴を把握する事が出来ます。数を熟す「熟練」といった抽象的な表現になりますがこれが凄く大切な技術の一つになると思っています。

実際にテストカットをしてみる工程は必要不可欠で、削ってみる事で得られる情報も多く、事前に特徴を掴む事で製品を良質に仕上げる製作難易度を下げる事が出来ます。

材質の特徴を熟知する事で切削条件の最適化や事前に加工工程のリスクヘッジを考慮する事が可能になり段取りを迅速に行う事が出来ます。

以上が【前編】になります。【後編】に続く…